ま、私の初恋の思い出話など誰も聞きたくないでしょうから、さっさと本題に移ります。日本ではこんな風にすっかり女性が男性にチョコレートを贈る日、もしくは告白する日になっていますが、これがお菓子業界の陰謀だと言うことはすでに皆さんご存じのことと思います。とにかくスーパーだろうと、デパートだろうと、特設会場は黒山のひとだかり。高級なチョコレートからウケ狙いの企画チョコレートまでありとあらゆる種類のものが並んでいます。またこれに便乗しようとしてなのか、何故かハート形のハンバーグやつくねまで売られています。どういう人が買うのでしょう。買う人がいるから売られているのでしょうか。日本人の一人あたりのチョコレート消費量は第15位(1999年)だそうですが、このうちどれくらいの割合をバレンタインが占めているのでしょう。バレンタインにチョコレートを買ったりしなくても、消費量の世界一は日本の約6倍の量を食べるスイス人なのだそうです。オランダはというと12位。私の印象よりも低い順位のような気がします。
もともとチョコレートとはカカオ豆を砕いてどろどろにした飲み物だったのですが、カカオからココアバターをしぼる方法を見つけて所謂ココアにしたのはオランダ人のファン・ホーテンという人。その後スイスでミルクチョコレートが発明され、現在のチョコレートの元になりました。チョコレートとのつきあいは日本よりもずっと長いというわけです。
だからなのでしょうか。ヨーロッパの人たちはチョコレートをこよなく愛します。食事などに招かれておみやげに持って行くものの定番といえばお花とチョコレートです。日本では子供や女性に人気だというイメージがありますが、他国では男性もよく食べます。ヨーロッパの人の大好きな濃いコーヒーや、ワイン・ブランデーなどの洋酒とよく合うからでしょう。
おみやげなどにはやはりちょっと高級なプラリネなどを選ぶことが多いようです。ナッツに飴をからませてクリーム状にし、チョコでくるんだプラリネはベルギーのノイハウスで考案されたものですが、今や日本でも作られるようになっていますね。オランダの町でも小さなお菓子屋さんのウインドーでさえ見かけることができました。やはりベルギーのお隣のことだけあるなと思ったものです。が、ある日試しに食べてみて愕然。中のプラリネがまずいといったらないのです。砂糖を何かつなぎを使って固めたという感じ。ぼそぼそと砂糖がこぼれ落ちてくるような代物でした。たまたま外れくじを引いただけなのかもしれませんが、海外で暮らしていて一度失敗するとなかなか再トライはできないものです。結局、町の中心部に出かけて有名ブランドのプラリネを買うことで落ち着いてしまいました。オランダにはベルギーのチェーン店がいくつも支店を構えているので苦労がないのです。レオニダスなどはあちこちに店舗がある上にゴディバやノイハウスなどと違って比較的安価だったので、お友達が訪ねてくるときなどにはよく利用していました。
普段口にするのは、ブランドもののプラリネではなくスーパーなどでも手に入るチョコレート菓子です。お菓子の3分の2以上はチョコレートが占めているような状態で売り場面積も大きいのですが、日本ほどバラエティに富んでいなかったような気がします。日本よりもチョコレートとしての規格(カカオの含有量)が厳しいからかもしれません。純粋にチョコレートの味を楽しむものが多いようでした。
スイスの会社ネスレのチョコレートが多く、日本でおなじみのキットカットの他、日本では売られていないおいしい製品にも巡り会えました。ネスレ以外にもスイス製のものやフランス製、もちろんオランダ製のものもあり、それぞれに特徴があるので食べ比べるのも楽しみの一つです。オランダ製と言えばやはりドロステのココア。おみやげにもよく買われますが、自分で甘さの調節ができる点がグッドです。
また、オランダの場合、チョコレートはおやつやおつまみだけではありません。食事にも使います。日本ではスプレーチョコレートと呼ばれていますが、さらさらとした小さな棒状のチョコレートを、マーガリンを塗った食パンの上にふりかけのようにかけて食べる食べ方が結構ポピュラーのようです。日本にもあんパンやチョコパンはありますからそんなに驚くようなことではないかもしれませんが、大人の男性も食べるようです。スーパーではジャムやピーナツバターの棚に一緒に並んでいました。私も真似して食べてみましたが、これならチョコクリームを塗った方が食べやすいのでは? と感じました。上手に食べないとぱらぱらと落ちてきてしまうのが難点です。
ところで、実は今年、世間の熱にうかされて生まれて初めてチョコレートを手作りしました。娘と一緒に夫のために(いや、本当は自分が食べたかったのですが)。チョコレートというのは温めると溶けるのは誰もが知っていることですが、これをそのまま型に入れて冷やしてもおいしいチョコレートにはなりません。カカオバターが分離して固まり、白い斑点状になってひじょーにまずくなるのです。ではどうしたらいいのかというと、いったんある温度まで冷やしてから5度ほどまた温め直し、かきまぜて再度冷やす・・という面倒な作業が必要になります。チョコレートをおいしくつくるのには、温度管理が命というわけです。つまり、温度管理しやすい地域、寒い地域がチョコレートづくりにはベスト。チョコレートがヨーロッパの、それも北の方面ほど愛されているのにはちゃんと訳があったのだな・・とチョコレートに入れた温度計を見ながら思ったのでした。
で、リンツの割チョコを使って作ったチョコレートは大成功。ハート形のチョコを娘と二人でおいしく頂きました。あなたの今年のバレンタインはハッピーでしたか?
(2003年2月14日記)