2004年03月27日

花の季節が来ると

2月末頃、オランダはクロッカス休暇のとなります。冬至を境に少しずつ日の入りが遅くなり、夕日のようにオレンジがかっていた太陽の光が心なしか暖かく白い力強さを取り戻してくると、冷え切った大地にもクロッカスの花が咲くようになります。寒の戻りに身を縮めることはあっても春の訪れを確実に感じ始めるこの時期、学校の休暇にこんな花の名をつけるなんて、オランダ人は風流だと思いませんか?私は北国育ちなので、寒い地方の人たちがどんなに春を待ちわびているのか知っています。そして、寒いところでは春が爆発するように訪れるということも。日本では梅と桜の開花の時期のずれが北へ向かえば向かうほど短く、北海道あたりではほんの一週間ほどしかありません。あらゆる春の花が短い間に一気に咲くのです。
オランダは高緯度に位置しているので、毎日日の出日の入りの時刻が驚くほど変化していきます。やはり春が一気にやってくると言ってよいでしょう。そして花の季節がやってきます。

以前にもお話をしたように、ヨーロッパの人々のプレゼントといえば花とチョコレートです。特に花はかかせません。それだけに街角やスーパーの店先などあらゆるところに花屋があり、皆気軽に買っていきます。とにかく安いのです。1000円も出せば立派な花束になりますから。日本だと高価な切り花はなかなか特別な時でもないと買えませんが(もちろん買う人もいるでしょうが)、これだけ安ければ日常的に楽しむことができます。花というのは生活の潤いですから、こんなゆとりを持てるオランダ人を心底うらやましく思ったものです。

花の値段が安いのはオランダが花の輸出大国であるということと無関係ではないでしょう。日本でオランダといえばチューリップというイメージが強いのですが、そういった球根以外に切り花などもヨーロッパ各地に輸出しています。スキポール空港そばにはアールスメア生花市場がありますが、これは市で競り落とされた花が即座に空輸できるようになっているからです。実際、それらはその日のうちにロンドンやパリの花屋に並ぶのだと言います。花農家そのものもスキポール周辺に多く、季節によっては夜飛行機で空港に降り立つ際、足下にオレンジ色の明かりをあちらこちらに見ることが出来ます。ビニールハウスの照明です。多分、照明を当てることで太陽光に見立て、ビニールハウス内の季節を調節しているのでしょう(本当のところは分かりません)。
もちろん、チューリップの栽培も盛んです。かなり前に投機の対象になったことがあり、競って品種改良がなされました。その後バブルがはじけたものの技術力だけは残ったのです。ライデン付近など、チューリップの絨毯が遠くまで続いている様は壮観です。ただし、絵はがきにもよく見られるこの風景は本当に限られた期間のみのもの。色とりどりのチューリップの花々も決して観光用ではなく球根を売買するためのものですから、球根に負担がかからないうちにすぐ花を摘み取ってしまうのです。ですから、丁度花が咲いている時期にオランダを訪れることが出来た人は非常にラッキーです。

こんな風ににオランダは商用としての花の栽培が非常に盛んな国ですが、国民レベルでも花を愛する心は強いようです。切り花を買って食卓や玄関、窓際を飾るのはもちろんなのですが、庭の手入れもよくしています。数軒の家がつながっている長屋式のテラスハウスでは、ドアの前の花壇の他に裏側に庭があることがほとんどです。ブランコや砂場もおけるほどの大きさなので、どの家もたいてい花を植えて楽しみます。私の見たところ花の種類ごとにお行儀よくしつらえてある場合はあまりなく、無造作に色々な種類の花が混在していることが多いようです。かといって放置しているわけでもありません。雑草はきちんと抜いています。また、それはよその家のものも気になるらしく、あまり手入れをしていないと注意されることもあるようです。

庭のないアパートメントに住む場合でも、プランターをベランダなどに飾って楽しみます。日本も最近ではラティスをベランダの手すりに取り付けて花をハンギングしているのを見かけますが、寝具がベッドに取って代わり、布団を干す場所を確保しなくてよくなったことも一つの原因ではないでしょうか? オランダは当然ベッドを使用しますし、洗濯物を外に干す習慣がありませんから、ベランダを花で埋め尽くしても何の問題もないわけです。プランターはやはり様々な種類の花の寄せ植えが多く、気楽に花を楽しんでいる姿勢が伺えます。

他に共同農地を利用している人たちもいます。い農地を区切ってそれぞれの家庭ごとに好きなような使っているのです。それが借地なのか購入した土地なのかは知りませんが、農作業用の用具を収納する小さな小屋まで建てている人もいます。野菜を作っているのも見かけないわけではありませんが、たいていは花々を植えており、週末には作業後に花をながめながらお茶を飲んでいたりして、その優雅さにうらやましくなります。私の場合そのゆったりした風景を見るだけでもうれしくて、時々家のそばの共同農園横を散歩したりしていました。

こんな風にガーデニングが盛んだからでしょう。オランダではガーデニングの専門雑誌が沢山売られていました。郊外の園芸専門店も、週末ともなれば沢山のお客さんでいっぱいです。さすがに私たちはガーデニングするほど長くオランダに滞在する予定はなかったのですが、園芸店には季節を象徴する花々が並んでいるので、時々鑑賞しに出かけていました。特に春先は一般の庭よりも一足早く花であふれるので、春を感じるにはベストな場所なのです。

貧乏だった私たちはそんな風にもっぱらよその花で楽しむ毎日でしたが、花の王国を十分満喫出来ていました。それでも、今にして思えばもう少し切り花で家を飾ればよかったかなとも思っています。最近は日本でもずいぶん安い花をみかけるようになりましたが、オランダに比べるとあまりにも高価です。日本も以前は身近な野の花を愛でていたのに、どうして花が特別な物になってしまったのでしょう。もともと日本にはない西洋の花を用いるようになったからでしょうか。
オランダの人々のように日常生活の中に花を取り入れることが出来たら・・ガラスケースの向こうのあでやかな花々をみながら、思うのです。

(2003年2月28日記)
posted by Kako at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 気候・風土
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