発端は二週間前、娘をおけいこごとに連れて行った帰りのことでした。車のラジオから「Robbie Williams」という名前が聞こえてきて、私の耳はラジオに釘付けに。彼はイギリスのシンガー。イギリスではかなり売れている人で、オランダ滞在中にも彼の歌声はしょっちゅう耳にしていました。まあ、オランダ語のテレビ番組を見ても仕方がないので、見るのがMTVばかりだったという事情もあるのですが。その際、曲のメロディーの良さ、声、PVの作り込み方に結構はまってしまったのでした。その彼が先日発売されたアルバムのプロモーションのために来日することは知っていましたが、日本では大きなコンサートホールではなく招待形式の小規模なライブを行うのだとのこと。その招待状を希望者から抽選で**名にくれるというではありませんか。私、家に着くなり、ダメもとでファックスを送りました。断っておきますが、私がラジオ番組へ投稿をするなんて20年前の「オールナイトニッポン」以来です。そして、あきらめかけていたライブの二日前、招待はがきは我が家の郵便受けに届いたのでした。当たってそりゃうれしかったのはもちろんなんですが、はたと困りました。娘をどうしよう。ライブは全員スタンディング。まさか6歳の娘を連れて行くわけにはいきません。頼みの綱の主人もやはり一緒に行きたい様子。で、急遽ベビーシッターさんを頼むことにしました。友人に聞くと前日の予約は難しいかもと言われましたが、なんとか確保。こうやって娘の世話をなんとか出来たものの、今度はライブそのものにも不安。若い子ばっかりだったらどうしよう。だいたい、立ちっぱなしのライブなんて行ったことないし。最後に行ったのは中島みゆきの「夜会」。洋服は? おしゃれな服なんてないよ。人前に出て行くのはPTA用のお堅い服だけじゃんよう(テンションあがって、人格が変貌しています)。まあ、実際行ってみたら結構年齢層は高く、そう浮くこともなくて一安心(と、信じたい)。お行儀よく整理番号順に会場内へ。
ライブはもう、最高でした。この年にしてタテのりで踊りまくるとは思ってもいませんでした。彼の場合はトークも面白いので、もう少し語学力があればなーと思いましたが、半分以上は理解できたので満足。なんだかオランダ滞在の皮膚感覚が戻るような、不思議な夜でした。そして、心配していた娘は、シッターさんと仲良く遊んだ後苦なく眠りについたようで、家に帰ったときはすやすやと寝ていました。
実はベビーシッターを利用したのは今回が初めてでした。他の多くの日本人と同じで、どうしても罪悪感を感じてしまうのです。
欧米の人は本当によくシッターさんを利用します。仕事などの他、おけいこごとやご主人とのデートなど、色々な場面で日常的にお願いしている人が多いようです。小学生以下の子供だけで留守番をさせると罪になるという状況も関係しているかもしれません。ですが、「母親は子供のことばかりに集中していてはいけない」という考え方が浸透していることの方が大きいと思います。日本とはまるっきり逆ですね。日本なら「母親は子供のためだけに生きるのが当然だ」という感じですから。オランダで誰かと自己紹介や世間話をする際、「娘が学校に行き始めて・・」などと話すると、「で、あなたは? 今何してるの? 何かやりたいことはあるの?」と畳みかけられます。子供のことにかまけて自分自身のために何かをしないのは、愚かな人間がすることだという意識があるようです。そのためには自己投資も必要だし、子供と離れる時間があって当然だと。
今の日本の子供達は本当に沢山の習い事をしていますね。毎日幼稚園に迎えに行った後おけいこごとの場所まで連れて行くママたちは、まるで子供のマネージャーです。子供が大きくなると、塾やら学校やらの情報収集や送り迎えになるわけですから・・・。もちろん、そういう人ばかりではないでしょうが、欧米の人からみたらきっと異様にみえるだろうなあと思うのです。
欧米の考え方が必ずしも正しいとは思いません。現に私はそこまでして出歩く必要はないと、娘をシッターさんに預けるようなことはしてきませんでした(お金もなかったのですが)。ただ、子供のことだけを見つめているのは、私のためにも、娘のためにもよくないことだと、一歩引いて眺める様心がけるようになりました。これは、安全のために娘を一人で家に置かないと考えるのとは別の問題だと思います。
日本でシッターを利用する人が少ないのは、その値段の高さにも理由があるでしょう。日本では、オランダの3倍以上になります。オランダなどでシッター代が安いのは、そのほとんどが会社などの組織を利用するのではなく、個人同士で直接お願いすることが多いからです。質的な心配があるのは確かですが、その辺はもともとご近所で知っているお姉さんだとか、口コミなどで信頼できる人を探すことで解消しているようです。
また、インターナショナルスクールではシッター名簿を渡してくれました。英語のシッターなら安心感があるなと眺めていたら、そのどれも10代の子供達。えっ? どういうこと? と思ったら、どうもジュニアやハイスクールの生徒のよう。学校公認のアルバイトというわけです。つまり、去年までシッターさんに預けられていた子供が、中学生になった途端シッター側に回るのです。ちょっと不安な気もしますが、さすがに乳幼児の扱いは断っていて、小学生の遊び相手専門。確かに、小さい子を慈しむのはその子にとっても学習効果がありそうですし、そうやって皆にシッターのアルバイト経験があるからこそ、自分が親になった時にもシッターに抵抗感がないのかもしれません。(「だからこそ、怖くて嫌だ」という人もいるかもしれませんが)
ところで、私が何も言わないでいたら、娘はシッターさんのことをいろんな人に言いまくったようです。学校の担任の先生にまで。で、咄嗟に「なんで、そんなこと先生に言うのよー」と言ってしまいました。やはり、私の中に、「子供を預けて遊び歩くなんて、悪いママだ」という気持ちがあるのでしょう。今も、どちらが正しいママだとは、はっきり言えない私です。
(2003年3月7日記)
絶対に、悪いママじゃないと思いますよ。
ただ、日本にはシッターがいない……。
僕は田舎に住むシングルファーザーですが、
飲み会に行くとき、頼んだことあります。
公的なサービスじゃなく、私的に頼んだのです。
ベビーシッターさん、洋画でよく出てきますよね。
いつもうらやましいと思っていました。
たまに、夫婦でコンサートなんて、いいじゃないですか。
僕は一人で子育てする気などさらさらなく、
妻とは暮らしていませんが、まわりをどんどん巻き込んで、
いろんなひとの中で、娘が育っていけばいいと思っています。
>まわりをどんどん巻き込んで、
>いろんなひとの中で、娘が育っていけばいいと思っています
この部分にとても共感を抱きます。
このエッセイを書いた後に
何度かシッターさんをお願いする機会がありましたが、
親ではない誰かの視点が加わること
肉親以外からの愛情を感じること等
思っていた以上にプラスの面があると感じました。
人それぞれ色々な形の育児があるはず。
お互いにそれを認め合っていければ
日本での子育てはもっと楽になるでしょうにね。
肩肘はらずに、ちょっと楽をして、がんばりましょう。