2004年04月11日

オランダ人と自転車

オランダと言われて思いつくのは「風車」と「チューリップ」という人が大勢だと思います。でも、「自転車」を抜きにオランダは語れません。「自転車と言えば北京の朝の風景じゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、確かにオランダで道路を自転車が埋め尽くすというようなことはありません。自転車には自転車用の道路があるからです。それほど自転車利用者が多いと言えるのではないでしょうか。街により、その広さなどは違いがありますが、大抵車道と歩道の間にはまた一つ別の自転車用道路がついています。土地に余裕があれば左右の車線の両側にあることもありますし、片側のみに作られ、その中にセンターラインが書いてあって対面通行になっているものもあります。おかげで車は自転車を気にしなくて済み、また歩行者も自転車が横をすりぬけて怖い思いをすることもないのです。

オランダの人たちがよく自転車を利用するのにはいくつかの理由があるようです。まずはそれが国の政策であること。オランダはその国土のほとんどが低地で、海面以下の場所も沢山あります。これ以上地球の温暖化が進んで海面があがるようなことになれば、国土そのものを失いかねません。空気中のCO2を削減するために車の利用を控えるとなれば、代わりに活躍するのは自転車ということになります。こういった背景があるからこそ、自転車用道路の設置が可能になるのでしょう。
また、便宜が図られているのは道路だけではありません。オランダではなんと地下鉄や電車にも自転車を載せることが出来ます。さすがに通勤ラッシュの時間は無理ですが、指定内の時間であれば、自転車の乗車券(搭載料?)を払って一緒に乗り込めます。地下鉄のホームなどはほとんどエレベーターがついているので移動も問題ありません。ただし、国鉄のホームにはエレベーターが付いていないことも多く、電車の床がホームよりも高くて階段を利用するため、結構苦労するようです。もっとも見かけたオランダ人は競輪の選手かと思うような体つきのせいか、軽々と持ち上げてはいましたが。
駐輪場も至る所にあります。商店街などではそれぞれの店先に数台づつ置けるように台が設置されています。自転車の前輪を挟むように入れるもので、これならごちゃごちゃに置いて収拾がつかなくなることがなさそうです。

国土が平らだから、というのも大きな理由でしょう。風が強いのが難点ですが、それでも行けども行けどもどこまでも平らな土地が広がっている状況では、自転車を使う機会が多くなって当然かもしれません。

また、元来オランダ人が節約好きだということが関係しているとも言われています。自転車は身体一つで動きますし、ガソリンなどのエネルギーを必要としませんね。ヨーロッパ内でオランダ人のイメージといえば「ケチ」というのが通説なのですが、確かに余分な出費をしない、贅沢をしないという傾向はあるようです。例えばオランダ人も夏のホリデーには旅行に行くわけですが、キャンピングカーで出かけて宿泊費を節約。食事はオランダから持ってきたチーズやパンで済ませ、持ってきた自転車でサイクリングを楽しむというのが多いとかで、南仏などの観光地では地元にお金を落とさないオランダ人観光客に眉をひそめているのだそう。事の真偽は分かりませんが、スイスやドイツで渋滞を引き起こしつつゆっくりマイペースで走るキャンピングカーはほとんどオランダナンバーでしたし、キャンプ場もオランダ人で占められることが多いようでした。そういった国民性も、自転車利用に拍車をかけているのかもしれません。

いずれにせよ、オランダ人は強制されて自転車に乗っているわけでなく、自転車を十分に楽しんでいます。平日には自転車で通勤をし、休日にサイクリングを楽しむ人も多いようでした。そのために二台持っている人もいるのだとか。これは用途別に分けるという意味だけでなく、自転車の盗難が多いために常用には古い汚い自転車を使い、休日用にはぴかぴかのいいものを使うということらしいのです。確かに盗難は日常的らしく、皆かなり頑丈なチェーンキーで柱などにつけています。
車の上や後ろに自転車を積んでいるのもよく見かけます。郊外でサイクリングするのでしょう。普段の道路についている自転車用道路とは別にサイクリングロードがあるようです。

不思議な自転車に乗っている人も見かけました。仰向けで寝た形になり、足で漕ぐというもの。首を少しだけ持ち上げた状態では腹筋がつらそうですし、第一危険なのでは? といらぬ心配をしてしまいますが、こういった人たちが筋肉隆々の体つきをしているところから考えると、何かのトレーニングなのかもしれません。

子供達もよく自転車に乗っています。自転車専用道路を使用できますから、親も安心して乗せることができるのです。子供達は大抵ヘルメットをかぶっており、自転車の後ろには細い棒についている旗(ロイヤルカラーのオレンジが多い)を差しています。目に入ったら危ないのではないかと思ったのですが、背の低い子供達の自転車があることがすぐ分かるように目印になっているのだとか。確かにこれなら車の合間を子供達が自転車で走っていても、気付くことができます。
小さな子供を自転車に乗せるときは、日本のようにサドルの前に小さな補助椅子をつけることはなく、後ろの荷台に乗せます。もちろんチャイルドシートを設置するのですが、日本のように生身が出る物ではなく、車のチャイルドシートのように全身を包み込むようになっていて、頭もきちんと保護されています。ここに乗せた上4点式のシートベルトを付けるので、かなり厳重です。これに慣れると、日本の自転車に乗せるのが怖いような気がします。

私も結構自転車を利用していましたが、購入するときに苦労したのは私に合う自転車がなかなかないことでした。私は身長が154センチほどで日本でも小さい方ですが、女性の平均身長が170センチを超えるオランダでは子供のようでしかありません。必然的に売られている自転車は車輪が大きく、どうやってこんなものまたぐのだろうというようなものばかり。その店に売られている一番小さな自転車のサドルを一番下に下げ、なんとか乗ることができたのでした。もしかしたら、ジュニア向けだったのかもしれません。
また、フットブレーキも慣れるまではずいぶん違和感がありました。フットブレーキというのはペダルを逆回しにするとブレーキになるというもの。信号などで止まった後走り始めたい位置にペダルを持ってきて置く・・というのは誰もが無意識にやっていることだと思うのですが、そうしようと思ってペダルを逆回しにしようとしてもペダルは動かず、前に回すと自転車が進んでしまうという困った状態になってしまうのです。もちろん、走行中に何気なくペダルを逆に回してしまってブレーキがかかってしまったことは数知れず。それでも二年使ううちになんとか乗りこなすことが出来るようになりました。
私の自転車には手元のブレーキもついていましたが、フットブレーキのみの自転車もオランダには多いので、旅行などでレンタルするときには気を付けた方がいいようです。

日本で見かける自転車は子供を前や後ろに乗せたママが多いというのは気のせいでしょうか。重い子供を乗せてふらふらしながら車道を走っているのを見ると、はらはらします。また、車道と歩道の区別もないような道を娘が自転車で走るのは、いくら過保護だと言われても避けたいと思ってしまいます。逆に車の運転中に前を自転車が走っていると、なんとかならないものかと感じます。安心して自転車に乗れるような道路になって欲しいと願うのは、この国では贅沢なのでしょうか。

(2003/5/17記)
posted by Kako at 22:40| Comment(8) | TrackBack(0) | 旅行・地域
この記事へのコメント
仰向けで寝た形になり,足で漕ぐ自転車.
それはリカンベントというタイプの自転車です.
特に腹筋がつらいということもないですし,ちっとも危険なことはありません.
空気抵抗が少ないことがメリットです.
普通の自転車よりも効率が良いみたいです.向かい風の時の影響も空気抵抗が少ないので,少なめです.
Posted by おのひろき at 2004年04月12日 23:33
おのひろゆきさん、コメントありがとうございます。

そうなのですか。
リカンベントという自転車は結構メジャーなのでしょうか。
私には不自然な姿勢のように思えたのですが
きちんと計算されて作られたフォームなのですね。
とても勉強になりました。

やはりblogというのはすごいですね。
こんな風に訂正、補足など頂けるなんて
とてもうれしいです。
この後自転車について記事を書くことはないかもしれませんが
他にも何かお気づきの点等あればどうぞご教示下さい。
ありがとうございました。
Posted by Kako at 2004年04月13日 08:40
すみません。
今、おのひろゆきさんのHPで確認させていただいたのですが
オランダで見かけた自転車はもっと完全に寝転ぶ形でした。
ベッドに寝転がり、頭だけ上げて足元のテレビをみるような・・

お写真で拝見したリカンベント自転車は
とてもリラックスして乗ることが出来そうですね。
自転車というのは奥が深いのだと
おのひろゆきさんのHPを見て感じました。
Posted by Kako at 2004年04月13日 08:49
Kakoさま

 拙blogへのコメント、ありがとうございます。

 Kakoさまの投稿を拝見するにつけ、
 たった1年だったけど、夢のようだったオランダ生活が
 懐かしく思い出されます。

 あのときは、
 ついに自転車を持つことなく終わってしまったのですが、
 自転車への思いは断ちがたく、
 ついに今年度より、一部通勤区間、自転車に乗っております。

 この辺の事情は拙blogでもご披露しております。
 よろしければご覧ください。

 ▼BRB
 <a href="http://bijenkorf.cocolog-nifty.com/spelen/2004/04/post_1.html">http://bijenkorf.cocolog-nifty.com/spelen/2004/04/post_1.html</a>

 気になるのは、
 せっかく買った自転車が盗難にあってしまうこと。

 オランダの街角でよく見かけた
 頑丈そうな鍵をぜひ手に入れたい、と思い、

 2月に2週間ほどオランダに出張しました折に、
 時間を作って自転車屋に行き、
 20ユーロくらいのヤツを購入してまいりました(^^;)

 我ながら、バカなことだと思いつつ......。
Posted by De Bijenkorf at 2004年04月19日 18:23
Kako さん,こんにちは
リカンベントは車種によってずいぶん寝そべり具合が違います.極端に寝そべっているのは空気抵抗が少ないだけスピードを出すのに有利ですが,くびが疲れるようです.
うまく頭も支えればよいのでしょうけど.

ちなみに,「おのひろき」であって,ひろゆきではありませんので,念のため.
Posted by おのひろき at 2004年04月22日 13:28
おのひろき さん

し、失礼しました!
お名前を間違えるだなんて申し訳ありません。
以後気を付けます。
Posted by Kako at 2004年04月22日 15:15
2004年の記事ですけど2007年に書き込みます(笑)

初めまして!
「オランダ料理」で検索してたら辿り着きました。

>>不思議な自転車
私はオランダのCHALLENGEというメーカーのFUJINというモデルに乗ってます^^
腹筋が辛いというよりも、首周辺の筋肉が鍛えられます♪
もちろん脚の筋肉はバリバリ付いちゃいますけどw
普通の自転車と違って脛にも筋肉が付いてきて足の太さを気にする女性には不向きかもしれませんけど。。

仰向けだと風の抵抗が少ないのである意味楽です。

オランダ料理では生のニシンに刻みたまねぎを載せたのを丸ごと食べるのと、茹でたうなぎに塩振ったのをパンに挟んだだけのにとっても興味有ります^^

kakoさまの記事面白いです。

ではまた^^
Posted by ごろう at 2007年06月29日 09:52
ごろうさん、はじめまして。
もうほとんど機能していないブログにも関わらず(笑)コメントどうもありがとうございます。

首周辺の筋肉・・確かに鍛えられそうですね。ベッドに寝そべりながら、足元のテレビを見ている感じと同じなのでしょうか。あれは、しばらく続けていると首筋が痛くなってくるんですよね・・。あのまま移動するというのは、ちょっと私には考えられないのですが。

オランダ料理で検索されたのだとか。そういう方、実はとても沢山いらっしゃいます。ご期待に添えられたのならうれしいのですが。
Posted by Kako(管理人) at 2007年06月29日 16:16
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