あれからわずか二ヶ月あまり。そのデジカメが壊れたというのです。某所で再会した主人が見たそのデジカメは一部がひしゃげており、どうも何かにつぶされたようなのでした。おそらく、カバンの底に入れ、その上に重い物・・おそらくパソコンなどを無造作に突っ込んだのでしょう。ついでに言えば、日本に感化を受けたMarcoはアメリカに戻ってすぐに日本製のノートパソコンを購入しており、それもまたどこかに落としたらしく、一部がひしゃげていたのだそうです。「だめだよ。Marco。もっとデリケートに扱わなくちゃ」と主人は言ったのですが、どこまで伝わったのでしょうか。
海外に住んでから日本に戻ると、電化製品のあまりの小ささ、軽さに改めて驚かされるものです。この辺も文化の違いだと言うことができます。
旅行記やエッセイで何度か触れてきましたが、私はとある電機メーカーで技術職として働いていました。その際に知ったのは、お国柄で製品への要求が違ってくるため、それぞれの要求にあわせた製品を設計しなければいけないということでした。
日本人はとにかく小さい物、軽い物を欲しがります。多少華奢でも、壊れやすくても、重くてかわばるものよりずっといいというのです。アメリカ人はといえば、まるっきり逆。例え重くなったとしても丈夫なのが一番。ちょっとぐらい落としても壊れないようなものを欲しがります。ドイツ人はどちらかといえばアメリカ人に近い感覚がありますが、要は質が第一。機能がシンプルで、基本性能がしっかりとしており、狂いのないことが絶対条件です。多機能が当たり前の日本とではかなり状況が違います。
オランダにももちろん電器屋さんはあります。売り場を歩いていると、そのシンプルな製品構成に気付かされることになります。冷蔵庫は2ドアがほとんど。色もあまり多くはありません。5つも6つもドアがついていたり、自動的に氷が作られる・・などといったこともありません。掃除機は重くてごついものが多いのですが、代わりに吸う力は強力。ベランダの砂も吸い取ろうというのですから、当然かもしれません。
携帯電話なども日本より一回り大きくなります。技術力によるところが大きいのでしょう。製品を小さくするためには中の部品を小さくする必要がありますが、これをきちんと配置して他の部品とくっついてしまったりしないようにするのには、精密な機械と技術力が要求されるのです。また、これを使いこなす側の問題もあるかもしれません。手先の器用な日本人になら簡単にダイヤル出来る大きさであっても、欧米人には難しいのかもしれません。なかなか精密機械をデリケートに扱えないMarcoを見ているとそう思ってしまいます。また、日本人はターゲットを消費行動の強い若い人たちに絞りがち。細かなものを扱いづらい中高年層を無視している面もあるのではないのでしょうか。もっとも最近は「お年寄り向け」と言わんばかりのボタンの大きい商品を見かけることが増えました。これでもう少しおしゃれなデザインなら年配の方だけでなく若者にも受けると思うのですが。
最近はドイツ製の電化製品が日本でも人気があるそうです。機能美というのでしょうか。シンプルな機能のみのつくりは、時としてデザイン性にすぐれていることが多いのです。これで本来あるべき基本性能がすばらしいのなら、人気があるのもうなずけます。
それでも海外製を購入する際に注意しなければいけないのは、電化製品はそれが作られた国の状況に合わせて作られた物である点です。例えば食器洗い洗浄機。確かにドイツ製は強力で汚れが落ちやすいのですが、和食器に対応できないことが多いようです。また、ご飯を中心としたでんぷん質の汚れについては、研究が進んでいるためか日本のメーカー製の物の方が落ちがいいように感じました。
洗濯機も、ヨーロッパでは外に洗濯物を干す習慣があまりないために、高温洗浄の機能がついています。また、住宅事情の違いからなのかあまり静音設計に心を砕いていないように感じました。
まあ、これらはあくまで自分が住んだアパートにあった電化製品から感じただけですし、日本で売られている海外の製品は日本の風土に合わせて設計変更されているのかもしれないので、一概に言えない面もあるのですが。
こんな風に電化製品もその国の文化を示す面があるため、他国では電器屋さんをのぞくのも結構面白いと思います。生活の一端がのぞけます。オランダならコーヒーメーカーが沢山ならんでいたり、台所をよごさないためかフライヤー(揚げ物をする専用のクッカー)が店の一角を占めていたり。日本の製品のすばらしさ(小ささ?!)も再認識できるかもしれません。
(2003/6/13記)