2004年04月26日

認めること

私たちの住んでいたアパートに20代後半ぐらいの男性が一人で暮らしていました。オランダ人特有の背の高さで、乗っている自転車のサドルの高いことといったら! 相当に痩せていて神経質そうであまりにこやかとは言えないのですが、会えば必ず挨拶してくれました(オランダの住宅街では会う人は必ず挨拶してくれますが)。すれ違うと必ず強い香水の香りが漂ってくるのでした。
住み始めて間もなく、時折彼の部屋に人が訪ねてくるのに気付きました。そしてそれが20歳ぐらいの男の子で、泊まっていくこともあるのだということも。たまに別の男の子も泊まっていくようです。そうか、そうだったのか。私は驚くよりもむしろ、何故かパズルが揃ったときのような感慨を持ちました。多分、彼はなんとなくそういう雰囲気を醸し出していたからなのでしょう。オランダでこういった同性愛者に出会うのは珍しいことではありません。夜の公園ではそういった嗜好の人たちがたむろしているという噂でしたし、別にそういった特別な場所でなくても、昼日中に手や腕を組んで散歩をしていたり食事をしたりといった光景はたまに目にしていました。最初こそ驚きましたが、慣れると別にどうだということもありません。彼らが特別いちゃいちゃしているわけでもありませんし、誰に迷惑をかけているわけでもないのですから。
どうも男性に特に多いような気がしますが、同性愛の人への嫌悪感をむき出しにする人がいます。私から見れば「いろんな人がいていいじゃないの?」といった感じですが。例えば、そのアパートの男性の代わりに、ぎらぎらと女性を物色し、私を見るたびに嫌らしい目をして身体に触ろうとするような男性が住んでいたら、その方がよっぽど迷惑な話です。彼は神経質なだけにゴミの出し方などもきちんとしていて、隣人としては申し分ないのです。

オランダの寛容な点はこういった人たちが好奇の目にさらされないですむというところです。彼らが普通に一緒に外出することが出来るのはオランダならではかもしれません。しかも、それだけはありません。社会的にもきちんとその関係を保護されているのです。
少し前に日本のニュースでも取り上げられていましたが、オランダでは同性の人同士の結婚が認められるようになりました。1998年にはパートナーとして認める法律が出来ていましたが、先頃、これをさらに進めて完全に結婚出来るようになったのです。

「結婚って何を意味するの?」と思われる方もいるかもしれません。たかが紙切れ一枚のことだという考え方もあります。実際そう考えて事実婚のままの人もいますが、いざというときにこれが大きな意味を持つこともあるのは、案外忘れがちなのかもしれません。
一番大きいのは財産の問題です。片方が亡くなったとき、夫婦なら共に築きあげたものとして配偶者に相続の権利がありますが、同居人というだけではそういうわけにいきません。何十年と夫婦のように生活をしていても、法律的には親族が相続人となってしまうのです(遺言があっても相続人は法律で決められた範囲の相続権があります。法律の専門家ではないので詳しいことは申し上げられません)。法的にパートナーを守るためには、たかが紙切れ一枚でも婚姻届が必要です。
ところが、同性のカップルの場合は法的に守ってくれるものがありません。これを解決するために、日本で多く行われる方法は養子縁組だそうです。法律上の親子になることで財産などを譲れるようにするわけです。オランダのパートナーの制度は養子縁組をしなくてもこれを保証するものでした。

それでは、パートナーの制度と結婚の制度の違いは何でしょう。
同棲していたカップルが籍を入れるきっかけになるのは、子供が出来たときだと思います。同性愛者の場合、子供が欲しいと思ったら養子を育てるということになりますが、パートナー制度の際にはこれが不可能でした。異性間の結婚でも養子を育てる権利を得るには結婚後三年以上経っていることが条件だったのですが、同性間のカップルにもこれが認められるようになったのが、最近のオランダの法律の改正なのです。夫婦別性ぐらいでがたがた言っている日本人の長老政治家なら卒倒しそうです。

先頃アメリカでもこの問題がクローズアップされました。日本よりは欧米の方が寛容かと思いきや、宗教というバックボーンがある人達にとっては許し難いことのようです。その中にあってオランダの対応は異質なのかもしれません。

オランダ人が全員、この法律に賛成しているのかどうかは分かりません。しかし、「自分がこうであるからといって、他人も皆こうでなければいけない・・というわけではない」と考えている人が多いのは確かです。「人それぞれに選択する自由があり、他人の自由は守ってやらなければならない」わけです。自分自身が自由であるために。

日本人は自由でしょうか? 

(2003/9/5記)
posted by Kako at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行・地域
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