私の管理にしているHPEnjoy!子連れたびは子連れ旅行を応援するために作った物ですが、案外オランダに住んでいらっしゃる方から感想メールを頂くことが多く、このエッセイを読んでおられるのかと思うと赤面してしまいます。というのも、私の場合、オランダに住んでいたと言っても身近にオランダ人の親しい友達がいたわけではなく、あくまで私の視点から見て感じたことを書き散らしていますので、勘違いや勝手な思いこみもあるだろうと想像するからです。もし、これを読んで何か気付いた点があったり、「自分はこんな風に思うけど」といったことがありましたら、ご指摘頂けるとうれしいです。
その頂いたメールの中に、「外国人の方とのお付き合いについて書いて欲しい」というリクエストがありました。私たちの場合何度も言うようにオランダの方との付き合いはあまり多いとは言えませんでしたので、身近にいた外国人の友人や、娘の通ったインターナショナル経由で知り合った方達との交流について少しお話ししてみようと思います。主人の職場に日本人はおらず、オランダ以外の様々な国から来た人たちの集合体だったというのは、少し変わった環境だったかもしれません。今思えば、全員が外国人のようなものですから、オランダ人の中に入っていくよりはずっと気楽に構えて良かったはずです。しかし、何度も言うように私は英語が得意ではありませんでしたし、海外旅行の経験もほとんどなく、まさか自分が外国人とつきあわなければならないような状況になるとは思ってもみませんでした。ですから、オランダに来てすぐ、主人の職場の人たちからお食事に招かれると、相当の覚悟をして出かけていかなければいけなかったのでした。
欧米では、お付き合いが家族単位です。さすがに私もこれぐらいのことは知っていました。ですが、いざおよばれとなるとどうしてよいものだか分かりません。「主人がいつもお世話になっておりまして」など言う慣用句も通じないわけですし。おみやげも何がいいのやら。
とりあえず、一般的なお花やチョコレートなどを手みやげに訪ねます。約束の時間に対しては、国によって失礼にならない遅れ方が違うようです。日本なら5分程度遅れるのがマナーですが、欧米ならもう少し後、ラテンの国々ならさらに遅くなります。自動車工業で有名なシュトゥットガルト(ドイツ)の人は「あの街はせっかちなところだらね。約束の15分前に行くのがマナーだよ」と言っていたので「几帳面なドイツ人ならあり得るかも」と思っていましたが、イギリス人の英語の先生によると「それはジョークだと思うけど」とのこと。本当のことは謎です。
ちなみに、折り紙を持っていって即興で鶴を折ってあげたら結構喜んで頂けました。次回にお訪ねしたときには他の民芸品の横に並んで飾ってあって、とてもうれしかったのを覚えています。私の友人は、旅行先で出会った子供達にぴかちゅうを折ってあげて、人気者になったと言っていました。何しろ、ヨーロッパでは子供達も現地語しか話せませんから、こういったことでコミュニケーションを取るのが一番でしょう。
招かれてお部屋に入ると、まず抱擁です。国によって回数が違いますが、ほほにキスされます(あるいは真似だけ)。私はここでお地蔵さんになってしまい、されるがままなのですが、どちらがどちらのほほにキスすべきなのか、未だによく分かっていません。よばれたのがお茶かディナーかで、ソファかダイニングの椅子を勧められるのですが、夏ならバーベキューも多いようでした。これだとずっと隣の人と話をしなければいけない状況ではなくなるので、言葉の苦手な私には好都合。特に、小さい子供連れなら子供の世話をすることでごまかしがききます。
もっとも、慣れてくるとそんなに苦痛ではなくなってきました。話がうまくできないことには変わりないのですが、日頃不思議に感じている習慣などを質問すれば話題には事欠かないことに気付いたからです。非ネイティブの人は訛りがあるもののゆっくりと平易な英語を使ってくれることが多いので結構助かりますし。ただし、ネイティブの人は例外。英語圏の人は「世界中どこの人々も英語を話している」とでも思っているかのようです。「ごめんなさい。私は英語が下手で・・」と恐縮するたび、「気にしないで! 私だって日本語が話せないんだから」と言いながら、何故かちっともスピードを緩めてくれない・・。知り合った人がいけないのでしょうか?
さすがに呼ばれっぱなしというわけにもいかないので、何人かには我が家にも来てもらいました。悩んだのはメニューです。日本に来ている外国人というのは、もともと日本に興味があるので好奇心旺盛ですし、日本食にも慣れています。ところが、外国で知り合った場合には、素地が全くありません。所謂「テンプラ」「スシ」も知らない人が沢山いるのです。どこまで日本食をつくっていいものか、迷いました。
その点、ブラジル人の友人は簡単でした。ブラジルは日本からの距離こそ遠いものの、移民が沢山居て日系の人たちの文化が深く入り込んでいます。実際に友人の中に二世や三世の人がいると言っていました。箸を使ったこともあるし、有名なものならなんでも知っています。彼らが希望したのは「家庭料理」でした。そこで、肉じゃがや、コロッケ。回数を重ねるとお好み焼きまでいろんなものをつくってあげました。気を遣っているのか必ず「おいしい」と言ってくれていたのですが、本当に口に合っていたのかどうかは分かりません。が、本人達の希望でしたから、まあ、いいのでしょう。
ヨーロッパ人の場合は結構自国の料理にこだわっている場合があるので、無理に日本食を作るのは避けました。海苔の黒さにぎょっとしたり、生魚を食べるのを不気味に思う人もやはり多いのです。興味がある場合以外は、中華料理程度が無難のようでした。
招く家族の中に小さい子供がいる場合、特に日本食はタブーです。子供は気を遣うということがありませんし、未知の料理を不気味がる傾向があるので、難しいようです。普段から日本食に慣れ親しんでいるような家庭ならいいでしょうが。
「郷に入っては郷に従え」と言います。相手に合わせたり、気遣ったりするのはとても大切なことです。ですが、限界もあります。要はお互いを認め合い、尊重する気持ちが伝わればいいのではないでしょうか? 「こんな時どうするのが相手にとって一番いいのか?」親しくつきあっていくためにはそれを都度聞き、「何か気になることがあったら言ってね」と話し、また言い出せる雰囲気を作るべきなのでしょう。例えば、同じようにみそ汁を飲む韓国の人たちにとって、椀に口を付けて吸うのはルール違反なのです。近い国だけにかえって微妙な違いが相手を不愉快にさせる場合もあります。文化の違いを認め、尊重すること。それが言葉を覚える以上に大切であることに気付かせてくれたオランダ暮らしだったのでした。
(2003年9月26日記)