東京はこの数日秋晴れが続き、10月末とは思えない気温にまで上がっています(作者注:これは2003年10月31日に書かれたものです)。私など部屋の中では半袖です。それでも秋の便りがあちこちから聞こえてくるようになりました。北海道からは早くも霜や雪の話題が届いています。そういえば私が東北の街に住んでいた頃も、初雪が降ったのは今日、10月31日でした。オランダはどうかと思えば、もう最高気温が5度程度にまで下がっているようです。
ヨーロッパの秋は早足で駆け抜けます。年により違いがあるのは日本以上ですが、夏の晴天が終わったと思うと急激に気温が下がり、曇りの日が続いて街路樹が黄色にそまります。楓など赤く色づく木がほとんどないので、紅葉ではなく黄葉といった方がぴんと来ます。これらを楽しむ感覚がヨーロッパにあるのかどうか分かりませんが、少なくても紅葉狩りのようなものはないようです。
日本で秋といえば食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋・・。気持ちのいい季節は何をするのにも最適と言われていますね。私の場合食いしん坊ですから専ら「食欲の秋」になり、秋の味覚を楽しむのに忙しくなります。
ところが、オランダではあまり秋の味覚と呼ばれるものがありません。森の多いフランスやドイツでは狩猟が解禁になってジビエ料理が供されたり、きのこが市場にあふれるようですが、オランダではあまりそういうことがないようでした(南部のマーストリヒトなどではジビエ料理が食べられます)。逆にハウス栽培が日本ほど盛んでないために、新鮮な野菜、特に葉物が少なくなっていく印象がありました。栄養のバランスが悪くならないようにと気を遣う毎日です。だからでしょうか。アメリカと同様にビタミン剤のサプリメントが飛ぶように売れています。薬屋の一角はこのサプリメントで占められているのです。もっともこれは弊害もあるようで、オランダ人の身長が高い(女性の平均でも170cm以上)のは、カルシウム剤の飲みすぎだからという人もいます。
読書の秋というのは夜長を楽しむことから言われていることですが、オランダの秋はまさに夜長です。日一日と日が短くなっていく様は恐ろしいほどです。日の入りが毎日10分も早くなっていくのですから。日の光は徐々にオレンジを帯びた淡いものになっていき、そしてそれが拝める日も数えるほどになります。そして10月の最終週末、時計を一時間遅らせて冬時間に入り、名実共にオランダは冬になるのです。
初めてオランダで冬を越すという年、在蘭の日本人の方々からさんざん「冬は気が滅入るわよ。とにかく暗くて」と言われた話は以前にしました。それを実感したのは11月です。オランダの人もそうなのでしょうか。みんな無口になり、陰鬱な表情になります。
それを振り払うかのようにこれから様々な行事が始まります。今日ハロウインの日はもともとスコットランドなどが発祥の地です。オランダ以上の高緯度に位置するスコットランドで、本格的な冬を前に様々な衣装に身を包んで大騒ぎしたい気持ちは痛いほどよく分かります。魔界との境がなくなってこの世に魔女が現れるという言い伝えは、これから忍び寄る闇を表しているのかもしれません。もっとも、ハロウインはあまりオランダではポピュラーではありません。が、似たような行事があるようです。一体いつだったのかよく思い出せないのですが、様々な家庭に子供達がやってきてお菓子をねだるというので我が家でも用意しました(作者注:後に読者の方からメールを頂き、いつの何という行事なのか教えて頂きました。次回これについて触れます)。残念ながら誰もやって来ませんでしたけれど。私たちが、子供のいる家庭は住まないアパートメントに住んでいたからかもしれません。
娘が通っていたのはアメリカンスクールでしたからハロウインの行事はしっかりありました。仮装大会になるのですが、中には昨年のハロウインが終わるとすぐに次の年の仮装を用意するようなリキの入った子供もいます。皆が皆魔女の格好をするわけではありませんでした。
街では映画祭や音楽祭などが催されます。ロッテルダムでも結構有名な映画祭が1,2月頃に行われるのですが、例年日本映画が上映されるようです。ちなみに私も見に行きました。「日本語の映画が見られる!」と喜びいさんで映画館に入ったのですが、事前にどんな映画か全然わからず、私の大嫌いなスプラッターものだと気付いて大パニック。半泣きになって退場するはめになりました。残虐シーンになると口笛と拍手が湧いていたのは、オランダ人みんながそういう嗜好があるというのではなく、マニアが集っていたからなのだとは思いますが・・・。
この後、オランダならではの聖ニコラウス、クリスマスとお楽しみは続きます。日の短い冬至の前後にこういった行事があるのはヨーロッパの人たちの知恵だったのだろうなと思わされます。これらの行事については、また改めて書いていくことにします。
(2003年10月31日記)