ところで、先ほど「オランダらしいもの、オランダらしいもの・・」とどんな話題を取り上げようかと考えながらテレビを見ていたのですが、今ロッテルダムのサッカーチームで活躍中の小野伸二選手がCMに出ていました。私たちがちっともマスターすることがなかったオランダ語を使いこなしている小野選手に感服してしまうのですが、その語感には何やら郷愁めいたものも感じます。例え話せなくても、響きや雰囲気はしっかりと耳が覚えているのが不思議に思えます。そして、景色の懐かしさ。背景にはオランダとは切っても切れない関係の風車が写っていました。オランダといって思い出すのはチューリップと風車だという人が多いのではないでしょうか。観光の目玉でもあるチューリップは有名なキューケンホフ公園を中心に、特定の地域で栽培されていますが、風車は国内の至る所にあります。
産業革命以降、オランダに一万基ほどもあった風車が十分の一程にまで減ってしまったといいます。それでも、郊外で風車を見かけるのは珍しくありませんし、町中にも結構残っています。風車のある通りにはそのものずばり、「風車通り」という名前が付けられていたり、そこで挽かれた粉は「**風車で挽かれた粉」と書かれた紙が貼られて売られています。観光用としてだけでなく、現役で頑張っているというわけです。もっとも、これはどんどん風車が減っていくことを憂う人たちが保存運動をしているからなのかもしれませんが。
オランダの人たちが風車に寄せる思いは、他の国の人たちよりも強いと想像できます。オランダの人たちにとって、風車は小麦を挽くという、食を手助けしてくれるだけのものではありませんでした。自分たちの国土を守っていたのです。オランダは海抜以下の地域が多く、それだけの低地で暮らしていくために灌漑は大切な事業でした。低地から水をくみ上げ、整備された運河へと注いでいたのは、風車の仕事だったのです。
オランダを歩いていると、本当に運河が国全体に張り巡らされているのを実感しますが、それ以上にその水面が非常に高いところにあることに気付きます。大雨でも降ったら・・と想像するだけでも怖くなるような高さなのですが、どうも運河はほとんど全てつながっているらしく、その水面は厳密にコントロールされているようです。そうと分かっていても、道路よりも一段高くなった堤防のようなところを覗いたら運河があったり、運河の下を高速道路がくぐったりしている(下手をすると船の下を車が走ることになります)のを見るとびっくりします。こういった生活を支えているのが風車だったのでした。
オランダは風の強い国です。北海から容赦ない強風が吹き付け、低地であるためにそれらが何かに遮られることもなく国土を吹き抜けます。日本製の華奢でおしゃれな傘はあっという間に壊れてしまうほどです。このエネルギーを無駄なく使ったのは本当に賢いことだと思わずにいられません。
最近では、私たちがイメージするどっしりむっくりとした風車とは別に、モダンで背の高い、痩せた風車が多く海辺で建設されるようになりました。これらは灌漑や粉ひきのためでなく、発電用のものです。これと同様のものは日本の北海道や秋田、青森などの海岸線にもあるそうで、自然のエネルギーを利用した発電に期待がかかっているのだとか。ただし、日本の場合コンスタントに風力を得られ、また騒音などの問題も起きないような広い地域は限られており、今のところ大々的に取り入れるのは無理だと言われています。その点、オランダほど好条件のところはないのかもしれません。ましてや火力などを用いてCO2を発生させることになれば、海面は上昇し、オランダの国土を失うことになるかもしれないのです。オランダが本気で風力発電に取り組むのは当然の結果なのでしょう。昔も今も、オランダは風車と共に生きているようです。
今、オランダで風車を見ることの出来るところは沢山ありますが、どうせ見るのなら世界遺産にも指定されているキンデルダイクがお勧めです。ロッテルダムの郊外にあるここは19基もの風車が並んでおり、7、8月の土曜日、一斉に回る様は壮観だそうです。近くにありながら、なんと私はこの様子を見ることが出来ませんでした。悔やまれます。ただ、全部が回ってはいなかったものの、のびやかな雰囲気に魅了されました。古きオランダの風景を偲ぶことが出来るところだと思います。
他には風車博物館のあるザーンセスカンスや、ライデン、それにキューケンホフ公園内などで、風車の内部を見学できます。キューケンホフの風車を見たときには、羽の回るのを内側から見ることができましたが、「これより先、危険。立ち入り禁止」という札を見るまでもなく、力強い動きをする羽に「これにあたったらまず命はないだろうなあ」と思わされました。
もしオランダに行く機会があったなら、オランダ人が愛している風車に是非立ち寄ってみて下さい。
(2003年11月17日記)
ワッキー
キンデルダイク行きましたねぇー。
4ヶ月しかいなかったのに3度も行きました。
滞在中、日本からバラバラにやってくる短期出張者がことごとく風車を見に行きたいというので仕方なく・・・。
さすがに飽きました。
キンデルダイクはのんびりした感じがいいのですけど、風車以外なーんにもないですからねえ。
まあ、それが本来の風車の姿なのかもしれませんが。