2004年05月12日

シント・ニコラスがやって来る

今回も季節はずれの話題で申し訳ありません。これが書かれたのは2003年11月14日です。

オランダの11月は暗くて寒い時期ですが、先週にも書いたように大きな行事がやって来ます。子供達が待ちこがれるシント・ニコラス祭です。このお祭り自体は12月6日なのですが、それに先立ち11月の第三日曜日にはシント・ニコラスが街にやって来ます。もともとシント・ニコラスというのは貧しい人々を救ったという伝説を持つ聖者のことでした。この伝説はヨーロッパ各地に少しずつ違った形で語り継がれています。オランダの場合、伝説というのにはかなり現実感があります。現れ方が妙に具体的なのです。
シント・ニコラスは大僧正の格好をし、ムーア人のズワルト・ピットという従者を何人も引き連れて、スペインから蒸気船でやって来ることになっています。実際、船で港にやってくるシント・ニコラスを市民が大歓迎し、「今年もシント・ニコラスがオランダにやって来ました」というようなニュースになります。

この後シント・ニコラス祭の12月6日まで、シント・ニコラスはズワルト・ピットと一緒にオランダ国内のあちこちのショッピングモールや学校などに現れ、ズワルト・ピットはちょっとしたお菓子を子供達に配ります。ですから、この時期にはショッピングモールなどに「11月*日、シント・ニコラスが**ショッピングモールにやってくるよ! みんな来てね!」などと書かれたポスターが貼られ、子供達はいそいそとこれに出かけるのです。
学校ではシント・ニコラスやズワルト・ピットの帽子を作り、家ではシント・ニコラスが乗っている馬のためににんじんや水を用意してシント・ニコラスが現れるのを待ちます。あちらにもこちらにもやって来るのですから、シント・ニコラスはかなりの大忙しのはずです。もちろん、そのどれにもでかけようという子供達も大忙しになります。そして、この3週間程が楽しくて仕方がないようです。

そして、いよいよシント・ニコラス祭。前夜にシント・ニコラスは各家庭を訪問します。手に携えた赤い本の中から、その家の子供の一年間の行いを詩にしたものを読み上げ、よい子でいたのならプレゼントを、悪い子はプレゼントを入れていた袋の中に入れてスペインまで連れて行ってしまうのだとか。この時期に急に子供達の聞き分けがよくなるのは、日本のクリスマス前と同じでしょう。

もちろん、この詩もプレゼントも親が事前に準備し、シント・ニコラスに扮した人に渡しておくのですが、小さな子供達はその存在を全面的に信じています。サンタクロースと同様に。

ここまで読んで、シント・ニコラスとサンタクロースが随分似通っているという印象をお持ちの方も多いと思います。実のところ、語感からも想像できるとおり、もともとシント・ニコラスはサンタクロースの原型だと言われています。オランダ人がアメリカ大陸に渡った際にこの風習が伝えられ、その後絵本作家が題材にしたことがきっかけとなり、私たちのイメージする赤い服、白いひげ、小太りのおじいさんというイメージができあがりました。ちなみに、赤い服は某飲料メーカーが自社の宣伝にサンタクロースを利用する際、カンパニーカラーを使って定着したのだそうです。

ヨーロッパの人々にとっては聖者であったはずの人が「Ho! Ho! Ho!」と笑う陽気な小太りじいさんになっているのはあまり気持ちのいいものではないようですが、今では逆輸入されてすっかり定着しています。オランダの場合も、シント・ニコラス祭が終わると次はクリスマスというわけで、子供達はしっかり二回もプレゼントをもらうことになります。ただし、クリスマスの飾りはシント・ニコラス祭が終わってから。その前にクリスマスツリーなどを飾るのはタブーになっています。

ところで、オランダ人はこの全世界的に有名になったサンタクロースが、シント・ニコラスをもとにしているということを自慢に思っているようなところがある気がします。私は実際にはヨーロッパのどこのシント・ニコラスがもとになったのか怪しいとにらんでいるのですが(真実をご存知の方、お教え下さい)。オランダの人たちはどうも「私たちこそ元祖」と主張することが多いようです。
ロッテルダムから南に下ったところにエフテリングという遊園地があります。童話などをモチーフにしたメルヘンあふれる素朴なつくりで緑が多く、私は大好きなところです。歴史が結構古いらしく、オランダ人の中にはここを「ディズニーランドはここを真似したのだ」と言う人がいます。そんなこと、オランダに来るまで聞いたことがありません。一体真相はどうなのでしょうか?
似たようなことはベルギー人にも言えて、「フレンチフライ(フライドポテトのこと)と言うけれど、あれは本当はベルギーで考えられたものなんだ。ベルジャンフライが正しいんだ」とベルギー人の友人が息巻いていました。
小さな国こそ、こういう負けん気が芽生えるのかもしれません。

11月半ば、オランダのスーパーなどにはシント・ニコラス祭用のハーブクッキーが並びます。決して私にとっておいしいものではありませんでしたが、それを取り巻く空気の冷たさや、子供達の笑顔も一緒に思い出され、懐かしい気持ちでいっぱいになるのです。

(2003年11月14日記)

追記
これを書き上げた頃、本館HP「Enjoy! 子連れたび」がYahoo!のディレクトリに登録され、@nifty@homepageではVippies(おすすめホームページ)に認定されました。特に@niftyでは紹介のページにこの「オランダ暮らしの雑記帳」が読み応えあると書いて頂き、とてもうれしかったのを覚えています。
新たな気持ちで頑張ろうと思ったのでした。
posted by Kako at 22:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 文化・芸術
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