2004年05月25日

シント・ニコラスが帰って

ズワルト・ピットを従えて半月ほどオランダ各地を回っていたシント・ニコラスは、12月5日のシント・ニコラス祭を終えるとまたスペインの方へ帰っていきます(作者注:この文は2003年12月6日に書かれたものです)。そしてこの日を境に、シント・ニコラス一色だったオランダはクリスマスの装いになります。ヨーロッパのクリスマスを本場だという言い方をする人がいますが、南と北とでは幾分雰囲気が違うというのが私の受けた印象です。ラテンの国々はどちらかというとイルミネーションが色とりどり。家で飾られるツリーのライトも単一ではないことが多いようです。逆に北側の国々ではノーマルなライトを使い、オーナメントも色を合わせてシックな感じに仕上げます。この色の決め方がなんとも絶妙で、ブルー、紫、銀色で統一されているものなども見かけ、大人っぽさを感じます。
もともとインテリアに凝るオランダ人ですから、主婦はその飾り付けに細心の注意を払っているのだと想像できます。大きなもみの木に飾り付けたツリーはほとんどの場合窓辺に置かれ、「どうぞご覧下さい」という状況です。もともと蛍光灯でのっぺりと部屋全体を照らすことがありませんから、薄暗くなった窓辺でちらちらとライトが光るツリーは本当に綺麗です。また、オランダの特徴でもある大きな大きな窓には豆球が張り巡らされていたり、宗教上の理由なのか、ろうそくを山型に並べたものを模した電灯が置かれており、夜の街を彩ります。この頃には冬至にも近く、午後3時頃には暗くなるので、このイルミネーションを楽しめる時間はとても長く、いつもならもぐらになったような気分になってしまうところ、この時期だけは寒い中の散歩も楽しいのです。

街全体も華やいだ感じになっていきます。スーパーの駐車場脇などには特設のもみの木売り場が設置され、枝振りのよいものを選ぼうとする人で賑わいます。また、クリスマス市もあちらこちらの広場で開かれ、オーナメントやお菓子など、クリスマスの雰囲気を盛り上げる可愛らしいものが売られます。クリスマス市というとドイツが思い浮かびますが、ヨーロッパの国々では規模の差こそあれ小さな街でも市は立つようで、クリスマスの準備に忙しい様子はお正月の準備で歩き回る年末のアメ横に似た雰囲気があります。また、その気分だけを楽しむ人も少なくないようで、ドイツあたりなど息も白くなるような寒い夜にホットワインを飲みながらそぞろ歩きをしている様は、年配の男性でも子供にかえったかのように無邪気な表情です。

そしていよいよ指折り数えて待ったクリスマスが近づくと、学校や職場が休みに入り、遠方から移り住んでいる人たちは実家へと向かいます。いわゆる帰省ラッシュとなり、空港が混み、チケットが高くなるのです。帰省した人たちは実家でのんびりとクリスマス休暇を楽しむことになります。
日本人にとってのクリスマスはクリスマスケーキを食べたり、パーティーをしたり、友人達とおもしろおかしく過ごす日ですが、欧米の人たちには日本人のお正月に似た感じがあります。家族水入らずで心静かに過ごします。
もちろん、教会へ礼拝に出かける人も多いようです。何度もこのエッセイに登場しているブラジル人の友人のところへその両親が丁度クリスマスに遊びに来ていたのですが、言葉も通じない、知っている居る人もいない異国の地だというのに、「クリスマスにはミサに行かないと」と、自分の宗派の教会を見つけてきて出かけていました。クリスマスの意味からすれば、本来そうあるべきなのでしょう。

ヨーロッパ内でも国によりクリスマスに食べる料理やケーキは違いがあります。イギリスならパネトーネ。フランスならブッシュドノエルなど形も素材もまちまち。ちなみにイチゴのショートケーキを食べるのは日本人だけなのだとか。誰が考えたのでしょうか。
オランダの場合、もともとターキーを食べる習慣はなかったようですが、最近ではアメリカの文化も入ってきており、クリスマス料理セットとして売られていました。簡単なので人気があったようです。
欧米でのクリスマス料理は日本のおせち料理と似ていて、保存しやすいものである傾向があります。日本のお正月と同様、スーパーなどが休業となるためです。それだけにクリスマスの準備はしっかりしておかなければいけません。コンビニもないオランダでは、食べ物を求めてさすらうことになりかねませんから。
我が家の場合、借りた家に備え付けてあった冷蔵庫は旅館にあるような小さなものだったため、クリスマス休暇中の食糧確保はかなり困難でした。それで、二回とも旅行に出かけることになったのですが、おかげでスペインやパリのクリスマスも知ることが出来ました。レストランなどが開いていなくて、少し苦労しましたけど。

日本中もクリスマスのイルミネーションがあふれています。私の住んでいるところのそばにも別名「クリスマス通り」と呼ばれる(勝手に私たちがそう呼んでいる?)地域があるのですが、夜などまばゆいばかりに電飾であふれます。こんな華やかなものも心が浮き立ってうれしいのですが、オランダやドイツで見たしみじみとしたものも忘れられません。これからクリスマスまで、オランダはますます日は短くなり、雨、風が強くなりますが、この時期にしか楽しめないあの雰囲気を、やはり寒さに負けずに味わいに行きたいなと、思わずにはいられないのです。

(2003/12/6記)
posted by Kako at 10:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 文化・芸術
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